Another World

意味のない言葉

私はその日、医者が目の前で私に話しかけている言葉を聞いていた。だが、その言葉の意味が私にまったく伝わってこなかった。理解したくなかったというほうが正しいかもしれない。医者の口は動いているし、声も聞こえている。ただ、言葉の意味だけが抜け落ちて...
Life

希望に満ちた朝に

今、空港バスで空港に向かっている。行きはすごくテンションが上がっているのに、帰りはいつもこうだ。日常生活という狭い世界に引き戻される感覚。特に帰りの空港バスの中では、そんな感覚がピークを迎える。これほど、日常生活から離れた所まできて、結局は...
Smile

涙の理由

その時、男は女の涙の理由を知りたいとは思わなかった。その理由がなんであれ、自分のことで頭がいっぱいで煩わしいことには関わりたくなかったのだ。女のありふれた涙は再び頬を伝って流れた。ついさっき、女が自分のハンカチを使って涙をぬぐったばかりなの...
Friend

繊細さって。

若いころの私はとても繊細だった。繊細すぎたといっていい。最近は繊細さは何かいいことのように言われることが多いけど、ううん、そんなことない。繊細さって、言葉を替えれば、周りの人たちの目を気にして生きることと同義だから…周りの人たちの意見に振り...
Life

輝くような未来

あの情熱はどこへ行った。あのじりじりと焼け付くような灼熱の情熱だ。その場にいても立ってもいられなくなるような強烈な熱を放つ情熱だ。たしかにそんな情熱がかつてのオレの中にはあった。そして、焼けつくような焦燥感を、味わいたくもないのにさんざんオ...
Life

極寒の中で

極寒の中で私はさまよっている。この辺りはもし、今が1月の下旬でなかったら、静かな街だ。ところが、この時期はどうだ。一歩間違えば、凍死しそうな寒さが肌を刺す。つま先の感覚もすでになくなっている。吐く息が白く立ちのぼっていく。体温はどんどん低下...
Life

あなたを振り向かせたかった

ねえ、あなた。私の愛しい人。元気でやっていますか? 私にとって、あなたはいつも高嶺の花。いつもこうやってあなたの横顔を眺めてたわね。今は踏ん切りがついたけど、一時期、私はあなたを私に振り向かせようと必死だった。でも、あなたはいつも仕事、仕事...
Smile

ささやかな恋のてん末

このバーにくると、私は今でも真奈美の笑顔を思い出す。真奈美はよくカウンターの奥から2番目の席に座って、マスターと話し込んでいた。私は会社の帰りにこのバーに寄り、私の定位置、真奈美の座っているカウンターの逆の奥から3番目の席に座ってひとりちび...
Friend

うちのたくろー、見かけませんでしたか?

うちのたくろー、見かけませんでしたか?たくろーがこの3日間ほど、うちに帰ってこないの。。 あっ、たくろーはうちの猫です。「うちの」と言っても、ご存じの通り、猫は気まぐれだから、いつの間にか出て行って、いつの間にか返ってくる感じだったけど。。...
Smile

選ばれた人間

あなたは考えたことがないだろうか?私はもしかして、選ばれた人間じゃないのかって?神様がこの腐った世の中をかえるために、私をつかわされたんじゃないだろうかって? 告白しよう。私は物心がついたときから、自分は選ばれた人間なんだって、固く信じてき...