男
さあ、結婚しよう。
今すぐしよう。
女
そんなこと言ったって。
まだ、心の準備が…。
男
何だよ?
そんなもの俺たちに必要か?
愛があれば十分だろう?
女
愛だけではだめなのよ。
私に毎年、誕生日の贈り物してくれる?
旅行に連れて行ってくれる?
贅沢は言わないけど…、ささやかなお家、もてる?
男
大丈夫だって!
貿易の仕事だって、軌道に乗ってきてるから。
俺を信じてくれよ。
大丈夫だって言ってるだろ。
それとも、俺を信用できないとでも言うのかい?
女
そんなこと一言も言ってないわ。
ただ…。
男
「ただ…」
何だよ?
女
ただ、あなたのことが大切すぎて怖いの。
あなたと幸せになりたい気持ちは本当だけど、もしもうまくいかなかったらと思うと不安になるのよ。
男
そんな心配は必要ない。
俺はいつだって君のそばにいる。
君を悲しませるようなことは絶対にしないよ。
これから先、ずっと君を守っていく。
だから、もう迷わず俺について来てほしいんだ。
女
本当に、ずっと一緒にいてくれる?
男
ああ、約束するよ。
君の笑顔をずっと守っていくから。
女
あなたがそう言ってくれるのは嬉しいわ。
でも、やっぱり私にはまだ心配なことがあるの。
勢いだけで決めるんじゃなくて、もう少しじっくり考えさせて。
男
じっくり?またその話か。
俺はもう待てないんだ。
毎日、君を見るたびに胸が苦しくなる。
早く俺たちの人生を始めたいんだよ。
女
私だってあなたと人生を共にしたいわ。
でも、結婚って人生の大きな決断なの。
将来についてもっと話し合わなきゃ。
私にはあなたのことをもっと深く理解する時間が必要なの。
男
理解?俺たちは十分理解し合ってるじゃないか。
細かいことは結婚してからでも遅くないだろ。
俺は君とならどんな困難でも乗り越えられる自信がある。
君にはその自信がないのか?
女
自信がないわけじゃない。
ただ、焦ってしまうのが怖いの。
私たちが失敗したらどうする?
男
失敗なんて言葉、簡単に口にするなよ。
俺が君を悲しませるようなことをすると思ってるのか?
俺のこと、本当に信用してるのか?
女
信じてるけど、不安はあるわ。
あなたは未来を夢見ているけど、私は現実も見なくちゃいけない。
愛情だけで結婚を決めるのは危険だと思うの。
男
君はいつだってそうだ。
不安だ、心配だって、そればかり。
君にとって俺はそれほどの男じゃないってことか?
女
そんな言い方はやめて。
私はあなたを大切に思うからこそ、慎重になっているの。
あなたが真剣なら、私が悩む理由だって理解してくれるはずよ。
男
もううんざりだ。
君はいつも口では俺を信じると言うが、結局行動に移そうとしない。
待つのは疲れた。
本当に俺と結婚する気がないなら、はっきり言ってくれ。
女
あなたがそんなに自分勝手だなんて思わなかった。
私だって真剣なのよ。
なのに、私の気持ちは聞いてくれないのね。
男
君の気持ち?俺の気持ちを考えたことがあるのか?
いつまで君の心の準備とやらに振り回されなきゃいけないんだ?
俺には君がただ逃げてるようにしか見えないよ。
女
逃げてるなんてひどいわ。
どうして理解しようとしてくれないの?
男
理解しているつもりだった。
だが、もう限界だ。
結婚する気がないなら、もういい。
これ以上君を待つのはやめる。
女
本当にそれでいいの?
男
ああ、君がはっきりしない限り、俺はこれ以上君に付き合っていられない。
女
分かったわ。
そんな態度なら、私たちはお互い別々の道を歩いたほうが良さそうね。
男
ああ、そうかもな。
もう話すことはない。
二人は互いに背を向け、そのまま別々の方向へ歩き出した。
愛し合っていたはずの二人の間には、深く冷たい沈黙だけが残った。
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