これが、おれの部屋の窓からの景色だ。
どうだい?
結構、都会に住んでいるだろう?
おれは20代前半の時にこの街に出てきた。
あのころのおれは都会に出たくて仕方なかった。
田舎では井の中の蛙だったから、自分の実力を世間に認めてもらいたくて仕方なかった。
田舎者の自分を脱ぎ捨てて、ひたすら「都会人」になりたかった。
だから、周りからの「田舎者」という評価には過敏に反応した。
時にはその言葉を撤回させようと、その評価を下した人間に迫ったりもした。
それを「若気の至り」と呼ぶのだろうか。
呼び方なんて気にしないが、とにかくおれは生まれ変わりたかった。
そんな「粋がり」はもちろん長くは続かない。
挫折が何度も何度も続くと、ただ生きていくだけでいいという気になってくる。
「都会人」なんていう言葉がむなしく響くぐらいに生存競争が激しくなる。
そして、年月だけが過ぎていき、気が付けばもう50代だ。
話が少しそれた。
今、50代のおれが思うに、「都会人」なんて幻影だと思う。
おそらく完璧な「都会人」なんてこの世にいないだろう。
クールで少し傲慢で、スーツを着こなし、都会の街をさっそうと歩く都会人。
これからもおれは「都会人」を目指すだろうか?
無駄なことはしなさんなと思う。
地に足のついた仕事のできる人間のほうが余程、信頼されると今では思える。
甘くて苦い「都会人」という幻影。
そんなものは今すぐに捨ててしまえばいい。
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